ミートソース1970
メモ#1052:
『ほんの数年前まで、自分が坊主頭の高校生だったなど、
誰が想像できるだろうか。・・』
苦手なアイスコーヒーをひとくち含んで、男はそう思った。
珈琲屋で紅茶を頼むのは、なんだか自分の、隠しておきたい幼稚さを露呈するような、
そんな気がした。
タバコに火をつけようとして、まだ、口の中にコーヒーが残っていることに気づき、
慌てて飲み込んだ。
タバコも、美味いと思ったことは無い。
皆、無いだろうと信じている、ただ、皆吸っているので、練習したのだ。
銘柄は、ちょっと前に発売されたばかりの、「セブン・スター」。
先日、仲間との寄り合いがあった際、これ見よがしに火をつけたのだが、
「プチブルみたいだぜ。」と嘲笑されてしまった。
だが、これ以外の銘柄は、きつくて吸えないのである。
『カランコロン♪』『いらっしゃいませ。』
「ゴメン、お待たせした?」
いや、平気だよ。
はすっぱだが、社交的で面倒見が良い、
バンドのマネージャーとしては最適な娘だ。
「あらぁー、タバコなんか吸っちゃって、らざちゃんも愚連隊の仲間入り?」
よせやい、美味いから、吸ってるんだよ。
「馬鹿言っちゃって。タバコなんて、美味いと思って吸う人、居ないわよ。」
そうだよな、と思いながらも、そんなこと無いよ、と答えた。
彼女は黙っていた。見透かれさそうで、目は合わせなかった。
タバコなんてマズイよ、といえる彼女が眩しかった。
「それで、何のオハナシかしら?
コンサートの切符なら、全部売りさばいたわよ。
あ、ウェイトレスさん、アタシ、クリームあんみつ。」
聞いてくれないか。
「アラ、どうしたの?藪から棒に。」
--- 中略 ---
「困ったひとネ。
そんなこと、すぐには・・・。」
今度は目を合わせた。
彼女が、目をそらした。
「あ、なんだかオナカが空いてきちゃったわ。
ウェイトレスさん、スパゲッティーもちょうだい。」
そんなお店で出てきそうな、ミートソース。

「コンサートが終わったら、返事をするわ。」
重たいエレキベースを、いつもより軽々と担いで、
男は練習場へ向かった。
『ほんの数年前まで、自分が坊主頭の高校生だったなど、
誰が想像できるだろうか。・・』
苦手なアイスコーヒーをひとくち含んで、男はそう思った。
珈琲屋で紅茶を頼むのは、なんだか自分の、隠しておきたい幼稚さを露呈するような、
そんな気がした。
タバコに火をつけようとして、まだ、口の中にコーヒーが残っていることに気づき、
慌てて飲み込んだ。
タバコも、美味いと思ったことは無い。
皆、無いだろうと信じている、ただ、皆吸っているので、練習したのだ。
銘柄は、ちょっと前に発売されたばかりの、「セブン・スター」。
先日、仲間との寄り合いがあった際、これ見よがしに火をつけたのだが、
「プチブルみたいだぜ。」と嘲笑されてしまった。
だが、これ以外の銘柄は、きつくて吸えないのである。
『カランコロン♪』『いらっしゃいませ。』
「ゴメン、お待たせした?」
いや、平気だよ。
はすっぱだが、社交的で面倒見が良い、
バンドのマネージャーとしては最適な娘だ。
「あらぁー、タバコなんか吸っちゃって、らざちゃんも愚連隊の仲間入り?」
よせやい、美味いから、吸ってるんだよ。
「馬鹿言っちゃって。タバコなんて、美味いと思って吸う人、居ないわよ。」
そうだよな、と思いながらも、そんなこと無いよ、と答えた。
彼女は黙っていた。見透かれさそうで、目は合わせなかった。
タバコなんてマズイよ、といえる彼女が眩しかった。
「それで、何のオハナシかしら?
コンサートの切符なら、全部売りさばいたわよ。
あ、ウェイトレスさん、アタシ、クリームあんみつ。」
聞いてくれないか。
「アラ、どうしたの?藪から棒に。」
--- 中略 ---
「困ったひとネ。
そんなこと、すぐには・・・。」
今度は目を合わせた。
彼女が、目をそらした。
「あ、なんだかオナカが空いてきちゃったわ。
ウェイトレスさん、スパゲッティーもちょうだい。」
そんなお店で出てきそうな、ミートソース。

「コンサートが終わったら、返事をするわ。」
重たいエレキベースを、いつもより軽々と担いで、
男は練習場へ向かった。
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